仕事でミスして迷惑かけちゃって、
そのことが頭の中でずっとぐるぐるしてるんです。
気にしなくていいって言われたのに、私の評価が下がったかもしれないって思ってしまって…



うん、その気持ちは自然だよ。



実はそれ、性格の問題というより脳の仕組みかもしれないんだ
なぜミスした後に「ぐるぐる思考」が起きるの?
「気にしないで」と言われても自分を責め続けてしまうとき、頭では分かっていても、心が納得してくれないんですよね。
でも、いつまでも自分を責めていると心がもたなくなってしまう。
そうは言っても、「気にするのはもうやめよう」と割り切ることもまた、簡単ではないという矛盾。
そしてまたぐるぐると失敗を思い返しては自分を責めてしまうループに。
一体なぜこのような状態になってしまうのでしょうか。
人間の脳は「危険」を優先して考える
人間は社会的な生き物です。
古来より人間はコミュニティのなかで仲間と助け合い、安全性を高めることで生き残ってきました。
昔の人は、
- 群れから追い出される
- 仲間に嫌われる
- 信頼を失う
これらのようなことが起きると、生存リスクが上がる環境だったのです。
脳には「扁桃体(へんとうたい)」という部位があります。
扁桃体は、危険のある状況下でも即座に反応し、命を守るための警報装置のような働きをします。
社会的拒絶は、かつての人類にとって、生命の危機と感じられるほど重大な問題でした。
現在でも、脳は「評価が下がってしまうかもしれない」「嫌われるかもしれない」という状況を、「集団から見捨てられる=野生では死」という生命の危機として解釈します。
そのため、扁桃体が「評価」「信頼」「嫌われる可能性」を危険信号として感知し、警報を鳴らしてしまいます。
これってちょっと、ありがた迷惑ですよね。
過ぎ去ったことなのに、
ずっと頭の中で警報が鳴ってるなんて…



そうだね。正直ちょっと大げさだよね。



でもね、脳は危険を見逃すぐらいなら、心配する方が安全って思ってるんだよ。
脳は悪い可能性を大きく考える
人間の脳は「ネガティビティバイアス」という、悪いことや危険に対して強く反応しやすい傾向があります。
同じ出来事でも、「良いこと」「悪いこと」が混ざっていると、悪いことの方が強く印象に残りやすいんです。
例えば、仕事で上司にこう言われたとします。
「全体的にはいいけど、ここだけ直してね」
この場合、目の前には「褒められた」「指摘された」という2つの事実がありますよね。
多くの人はこの時、指摘のほうばかりを考えてしまうんです。
指摘は「これから直さないといけない問題」なんだから、
考えてしまうのは当然なんじゃないでしょうか?



そうだね、問題に向き合おうとするのは当然だよね。



でもそこから未来の不安を膨らませるのは脳のクセなんだよ。
「問題に向き合うこと」と「不安を膨らませること」の違い
先ほどの例で上司に言われた、「全体的にはいいけど、ここだけ直してね」という言葉。
「直さないといけない」「改善が必要」という意味で、指摘に注意を向けるのは合理的だと言えます。
しかし問題はここからなんです。
本来は、「改善点がある」「次に活かす」というレベルの話であっても、脳は意味を拡大します。
例えば、上司に「ここだけ直してね」と言われたとき、
「ミスした自分はもうダメだ」→「評価が下がったかもしれない」→「信頼を失ったかもしれない」
このようにネガティブな意味を広げて、未来への不安を膨らませてしまいます。
こうして「ぐるぐる思考」が生まれる
危険を察知して扁桃体が反応
↓
悪い可能性を考える
↓
また危険を確認する
↓
さらに悪い可能性を考える
この確認が何度も繰り返されると、頭の中で同じことを考え続ける状態になります。
これがいわゆる「ぐるぐる思考」です。
つまり、ぐるぐる思考は弱さや性格の問題というよりも、脳が危険を見逃さないように何度も確認している状態とも言えます。



ぐるぐる考えてしまっても、きみが弱いわけじゃないんだよ。
「ぐるぐる思考」が生んだ“こうなるかも”は思い込み?
でも、評価が下がるかもしれないのは完全に私の思い込みなんでしょうか。
ミスが許されたからって、どうなるかは分からないし…



うん、ミスをすれば評価に影響することもある。
可能性としてはありえるね。



人の脳は“事実”よりも“予測”を作るのが得意なんだ。
脳は可能性を確定のように考える
人の脳は「可能性」→「起きそうな未来」→「ほぼ起きる未来」のように、予測をどんどん確信に近づけて感じるクセがあります。
しかしそれは、『ミスをした→評価が下がる可能性がある』という可能性のうちの一つです。
- 評価が下がるかもしれない
- 変わらないかもしれない
- ミスした事実自体を忘れられるかもしれない
これらは一つ一つがあり得る可能性です。
脳は危険を避けたいので、悪い未来を先に想像します。
ミスをした→評価が下がるかも→信頼がなくなるかも→仕事を任せてもらえなくなるかも
このように未来をシミュレーションします。
そして「実際に起こる未来」のように感じさせます。
つまり、可能性の一つであったことをもう起きたような感覚にさせるのです。
その結果、可能性の一つであったものが、「こうなるに違いない」と、実際に起こってしまうという思い込みが生まれます。
思考と思い込みの違い
「思考」は基本的に自動で起きていて、自分の意思で考えようと思って思考しているわけではありません。
ふとした時に自分が何かを考えていたことに気づいたという経験、きっとありますよね。
「ミスをした」→評価が下がるかもしれない
この思考は、考えようとしているわけではなく、勝手に頭に浮かぶものです。
問題は「思考が浮かぶこと」ではなく、「思考を事実だと思い込んでしまうこと」にあります。
思考と思い込みは確信度が異なります。
「思考」は、ただの考えであり、可能性として浮かんだものです。
例:「評価が下がるかも」「迷惑だったかも」「怒ってるかも」「嫌われたかも」など
「かもしれない」という可能性として捉えている段階
一方、「思い込み」は、確定したことが前提になっている思考です。
例:「評価が下がったに違いない」「迷惑だった」「信頼がなくなった」など
「そうに決まってる」と確定させた段階
そして、「確認する→考える→未来を想像する」を繰り返すことで、ぐるぐる思考につながるのです。



思考はただの考えなんだ。



でも人間の脳は、その考えを本当に起きたことのように感じてしまうことがある。それが「思い込み」になるんだよ。
ぐるぐる思考から距離を取るための視点
ぐるぐる思考がどのようにして起きているのかは理解しました。
それで私はどうしたらいいんでしょうか。



それじゃあ2つの視点から考えてみよう!
今考えていることは「事実」か「思考」か
ミスをした後、頭の中ではいろんな考えが浮かんできます。
「評価が下がったかもしれない」「信頼を失ったかもしれない」
こうした考えは、その瞬間には事実のように感じられます。
この時に一度、「これは事実かな?」と問い直してみるという見方があります。
例えば、事実はこうです。
- 「ミスをした→事実」
- 「指摘された→事実」
一方で、思い込みの思考はこうです。
- 「評価が下がった→まだ確認できていない」
- 「信頼を失った→まだ分からない」
こうして並べてみると、頭の中に浮かんでいるものの中にはまだ起きていない未来の予測が含まれていることに気づくことがあります。
このとき大切なのは、思考を否定することではなく、思考と事実を同じ重さで扱わないことかもれません。
「評価が下がったに違いない」と感じたときも、「これは事実なのか、それとも未来の予測なのか」と一歩引いて見てみると、少し距離を取れることもあります。



一見当たり前のことを言ってるようだけど、
思い込んでるときは案外できていなかったりするんだよね。
自分を責めてしまうときは「今の状態」として捉える
ミスをして落ち込んでいると、「わたしはダメだ」という考えが浮かんでしまうことがあると思います。
でも実際には「自分がダメ」というより「今、脳が危険を感じて守りに入っている状態」という方が近いのかもしれません。
ミスをして、ぐるぐる思考になった結果
「私はダメだ」「私は気にしすぎる人間だ」「私は弱い」と思い込んでしまう
「失敗してしまった私はダメだ」と自分自身の性格や人格として捉えるのではなく、「今こうなっている」という状態として捉えてみると少し見え方が変わるかもしれません。
状態はずっと同じままではありません。
疲れている日や余裕のないときに強く出てしまうこともあります。
だからこそ、“自分そのもの”ではなく、“今起きている反応”として見ることが、思考に巻き込まれすぎないための一つの視点になることがあります。



自分が“気にしすぎる人間”なんじゃなくて、
今は不安が強くなっている状態なのかもしれないね。
自分を責めてしまうのは、それだけ「ちゃんとしたい」という誠実な思いを持っている証拠なんです。
自分の中にそんな素敵な心があることも、どうか忘れないでもらえたらいいなと思います。
今まさにぐるぐる思考の渦中にいる人に
ぐるぐる思考の渦中にいる時、「ぐるぐるしている自分」に気づくのは容易ではありませんよね。
なので、考えることに疲れたと感じたら、まずは一旦考えることから離れることが大事です。
散歩に出かけたり、少し熱めのお風呂に入ったり、スポーツで体を動かすなどして体に外的な刺激を与えるといいと思います。
しかし、これらは「ぐるぐる思考そのものの解消」よりも、心の消耗を防ぐための手段です。
長期的には俯瞰するスキルを育てておくことが重要だと思っています。
(*俯瞰するスキルを育てる方法については改めて記事にする予定です。)
そして、「ぐるぐる思考をしている自分に気づく」ことは俯瞰の第一歩です。
焦らず育ててみたら、未来の自分がぐるぐる思考にのまれず、事実と思考をうまく切り離しやすくなるかもしれませんよ。



